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こころぐ vol.31

2026.08.01
花や実を摘み、観察し、草木で染める美しいアクセサリー

野山に咲く小さな花々、道端に落ちた枝や葉、木の実、花びら……。そんな自然のひとかけらをそっと集め、美しいアクセサリーへと昇華する作家さんがいます。

瀬戸内海に位置する香川県の豊島(てしま)で暮らし、草木染めのアクセサリーを作るVeriteco(ヴェリテ コ)の浅田真理子さん。その作品は豊島の植物と丁寧な手仕事から生まれます。そんな島の恵みを写し込ん だような生き生きとした作品をいくつかご紹介します。

島内にアトリエを構え、季節ごとの植物で作品を作る浅田さん。都内をはじめ、全国各地のイベントに合わせて海を渡り、旅をしながら島の魅力がつまった作品を届けています。


初夏に清楚な白い花を咲かせるウツギがモチーフのコサージュは、たくさんのオシベを作り、実物大に仕上げた本物の花のような佇まい。イヤリングは、飛んできたモンシロチョウが耳に止まって羽を休めているような物語を感じさせる作品です。

雨に濡れたようなツヤ感のある紫陽花をモチーフにしたイヤリング。ビーズやスパンコールを合わせつつ、自然の美しさを引き出すデザインに。小さいながら、紫陽花の持つ生命力や造形美が詰まっています。

ビロードのリボンをマリーゴールドで染め、さらに藍染めを重ねて作ったブレスレット。上品な光沢のある絹糸でたんぽぽの柔らかな綿毛を表現。深い緑色に真っ白な刺繍が映え、手元をやさしく彩ります。

染めて、型取りして、刺す


浅田さんの作品づくりは、野山を散策したり、畑で植物を育てたりすることから始まります。そこで、採れた植物をデッサンしたり、解体したりしながらじっくり観察し、デザインに落とし込んでいきます。

野山を散歩しながら集めた花や葉、枝、根、実、皮などは、染めの素材や刺繍のモチーフに使われます。たんぽぽは放っておくと綿毛になってしまうので、すぐに染めない時は冷凍しておくそうです。

草木染めは、植物から抽出した染料で糸や布を染め、媒染液に浸して色を定着させる伝統的な染色方法。同じ植物でも媒染の方法や染める時期、植物の状態によっていつも同じ色になるわけではなく、時間とともに色が変化していきます。その自然のゆらぎも草木染めの魅力の一つだといいます。

布と糸をたんぽぽで染め、葉や花の形をそのまま描き写して刺繍した作品。葉に使われた糸はたんぽぽ染めに藍染めを重ね、深い緑色を再現しています。

自然とアートに浸れる「豊島」


浅田さんの暮らす香川県の島、豊島(てしま)は、瀬戸内海の小豆島や直島などの島々に囲まれた、人口700 人ほどの島。豊島美術館や豊島横尾館など、多くの現代アートが点在し、3年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭の会期中には国内外から多くの観光客が訪れます。

春にはたんぽぽや菜の花、夏には紫陽花やひまわり、秋は黄花秋桜や栗が島一面に広がる豊島。わざわざ花屋さんに買いに行かずとも、外に出れば美しい草花がそこかしこに咲いていて、アイデアは尽きないといいます。

檀山の頂上にある展望台から眺める夕日。穏やかな瀬戸内海や美しい棚田の風景が広がり、四季折々の豊かな自然が望めます。

古民家に泊まり、のどかな景色や島の暮らしに触れるのも楽しみ方のひとつ。ここ「いい風が吹く。」は、納屋を改装した小さな民宿。キッチンつきで自炊ができ、魚を使ったお料理をテイクアウトすることも。豊島美術館や唐櫃の棚田には歩いて行くことができます。古いものの味わいが残る空間で、非日常を味わってみてはいかがでしょうか。
https://www.iikazegafuku.com

プロフィール

Veriteco
デザイナー 浅田真理子

東京での作家活動を経て、2015 年、夫婦で香川県の豊島に移住。島の植物を使った草木染めと繊細な手仕事で、大人の女性のためのアクセサリーを作り、全国各地を旅しながらさまざまなイベントに出展している。著書に「Veriteco の草木染め 春・夏・秋・冬・手づくりのある暮らし(グラフィック社)」、「Veriteco の刺繡図鑑(文化出版局)」があり、2026年10月「草花刺繍 染めて、型取りして、刺す(山と溪谷社)」を出版予定。
https://veriteco.com

撮影:福井裕子
モデル:花
取材・文:鞍田恵子