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-心くつろぐHYGGEな時間- こころぐ vol.27

2026.04.01
食べることで「肝」をいたわる春のはちみつ薬膳

春は「肝」が弱りがちな季節なのをご存知ですか?
暖かく過ごしやすい日が増えて活動的になる春は、体が冬に溜め込んだ脂肪や老廃物を排出しようとするため、気や血液の流れを循環させて消化を助ける「肝」に負担がかかり、さまざまな不調が起こります。 頭痛、鼻づまり、まぶたのむくみ、めまい、ふらつきなど、顔や頭に症状が現れやすく、イライラする、やる気が出ないなどの気分の乱れも「肝」の疲れのサインです。

こうした春のゆらぎや不調のケアに役立つのが、ミツバチと蜜源植物からできる自然の恵み「はちみつ」。「薬膳の考え方では、春は青い食材といっしょに食べるとより効果的です」。そう教えてくれたのは、前回に引き続き、日本はちみつマイスター協会代表理事の河村千影さん。
今回から一年を通してそれぞれの季節によく起こる体調の変化やおすすめの食材についてお話しをうかがいながら、はちみつを使った薬膳レシピを紹介していきます。

[五行を知って心と体を整える]

薬膳には「五行」という考え方があり、食生活に取り入れることで心身を整える効果があるといわれています。
「五行」とは、自然界に存在する現象を「木・火・土・金・水」の5つに分け、これらが均衡を保つことで、あらゆるものの調和が取れているという考え方です。五行にはそれぞれに属する「五臓(肝・心・脾・肺・腎)」があり、五臓のバランスを保つことで、健康が維持されると考えられています。また、春夏秋冬に長夏を加えた「五季」があり、季節とも深い関わりがあります。

●肝(かん)
気や血の循環をつかさどり、血液を蓄え、体内の血量を調整する働きがある。自律神経の安定、目や筋肉の働きと深く関係し、「肝」の機能が低下すると情緒が不安定になる。

●心(しん)
血液を全身に循環させるポンプの役割のほか、意識や思考と深く関わりがある。「心」が調子を崩すと不眠の症状や不安感が強くなる。

●脾(ひ)
消化吸収に関わる働きがあり、食べ物を気、血、津液に変えて全身に送る働きを担っている。「脾」が弱ると食欲不振、消化不良などのトラブルを招く。

●肺(はい)
体内に取り込んだ外気を浄化し、気を生成して全身に送る機能を持つ。皮膚や粘膜を強化し、外敵から防御する働きがあるため、「肺」が弱ると皮膚が乾燥し、鼻水や鼻づまり、免疫の低下などの症状を起こしやすくなる。

●腎(じん)
体の発育、生殖、老化に関わる「精」を蓄える。体内の水分代謝をコントロールし、骨や歯とも深く関わる。「腎」が弱ると、耳鳴り、白髪、抜け毛などの老化現象を招くほか、むくみも出やすくなる。

[はちみつ薬膳とは]

はちみつ薬膳は、東洋医学の陰陽五行説に基づき、栄養豊富なはちみつを取り入れた河村さんオリジナル薬膳です。
薬膳料理といえば、体に良さそうなイメージがある一方で、「漢方薬の味がしそう」「むずかしそう」「お金がかかりそう」といったイメージを持つ人も多いかもしれませんが、河村さんの薬膳に対する考え方はとても軽やか。「私にとって薬膳は、はちみつの素晴らしさを伝えるためのものなんです」というように、東洋の枠にとらわれず、身近な食材を使ってやさしく養生する知恵がつまっています。

[肝の働きを助けるはちみつ薬膳]

菜の花のミモザサラダ
●材料(2人分)
菜の花・・・1束
セロリ・・・1/2本
ゆで卵・・・1 個
☆アカシアはちみつ・・・大さじ1/2
☆りんご酢・・・大さじ1/2
☆塩・・・小さじ1/3
オリーブオイル・・・大さじ2
●作り方
1.塩茹でした菜の花を冷水で冷やし、水切りして三等分に切る。
2.セロリは筋を断ち切るように斜めに薄切りする。
3.ボウルに☆を入れて混ぜ、オリーブオイルを加えて全体が白っぽくなるまでよく混ぜる。
4.ゆで卵を黄身と白身に分けて細かく切る。
5.3 に菜の花とセロリを和えて器に盛り、4 をちらす。

薬膳では、春は「肝」を高める青い食材を食べることが良いとされています。「春のデトックス野菜といわれる菜の花は、肝機能の活性化や気血の巡りの改善に優れた作用があります。菜の花や山菜などの苦味成分は冬に滞りがちな胃腸の働きを活発にし、免疫力アップにもつながります」と河村さん。ミモザの花に見立てた卵の黄身が、見た目にも春らしさを感じさせてくれます。

薬膳では、酸味と甘味を一緒にとることで体調を整える「酸甘化陰(さんかんかいん)」という考え方があります。「りんご酢の酸味とはちみつの甘味を合わせることで、だんだんと陽(よう)の気が強まる春から夏にかけて、健やかに乗り切れます」というように、簡単で美味しいだけでなく、身体を労わってほしいという河村さんのまっすぐな気持ちが伝わってきます。

ドレッシングに使用したのは、秋田県産アカシアはちみつ(横手養蜂園)。透明感のある淡い黄金色が美しく、混じりっけのないアカシア本来の風味と澄んだ甘さを存分に味わうことができます。
「はちみつの貴婦人」と称されるアカシアのはちみつは、果糖を多く含んで結晶化しにくいので、料理にも取り入れやすいのが魅力。「はちみつの主成分である単糖類(果糖・ブドウ糖)は、食べるとすぐに吸収されてエネルギーになり、疲労回復に最適です」とのこと。美味しく食べることで、心が満たされていき、体の調子も整っていきそうですね。

(さいごに)
私たちの体は食べたものでできています。美味しく楽しく食べることも薬膳の考え方のひとつ。難しく考えず、まずは季節ごとにどのような食材がいいのかを知ることから始めてみませんか?
次回は「心(しん)」をいたわる夏のはちみつ薬膳をお届けします。

プロフィール

河村千影さん
一般社団法人日本はちみつマイスター協会代表理事、はちみつ料理研究家、和漢薬膳師。はちみつマイスターとして、ワークショップや薬膳料理教室、メディア取材などに参加し、はちみつの魅力を広めている。各県特産のはちみつを使った料理のレシピ開発も手掛け、2025 年4 月に『はちみつレモンレシピ(主婦と生活社)』を出版。https://83m.info

撮影:竹下アキコ

取材・文:鞍田恵子